自宅の駐車場や身近な道路にある、アスファルトのひび割れ。「まあ、古くなったから仕方ないか」と見過ごしていませんか?実はそのひび割れ、放置すると雨水が内部に浸透し、最終的には大きな陥没(ポットホール)に繋がる、道路からの危険なサインかもしれません。この記事では、舗装のプロが、ひび割れが起きる本当の原因とその種類、そして再発を防ぐための正しい補修方法について徹底解説します。
なぜひび割れは起きる?見た目だけでは分からない根本原因
アスファルトのひび割れは、単なる表面的な劣化ではありません。その下にある路盤や、日々の負荷など、様々な要因が複雑に絡み合っています。プロはまず、これらの根本原因を探ることから始めます。
原因1:施工時の圧密不足(初期不良)
舗装工事で最も重要な工程の一つが、アスファルトを敷く前の「路盤(ろばん)」づくりです。この路盤(砕石や砂利の層)の締め固め(圧密)が不十分だと、完成後に車両の重みで地面が不均一に沈下し、上のアスファルトがその動きに耐えきれず、ひび割れを起こします。見えない土台こそが、舗装の寿命を決定づけるのです。
原因2:交通量や過積載による負荷
道路は、設計段階で想定される交通量や車両の重さに耐えられるように作られています。しかし、想定を超える大型車が頻繁に通ったり、重量物を長期間置いたりすると、アスファルトは疲労し、ひび割れが発生しやすくなります。特に、車両が停止・発進を繰り返す交差点やバス停などは、負荷が集中しやすいため注意が必要です。
原因3:経年劣化と自然の力
どんなに頑丈な舗装でも、年月と共に劣化は避けられません。太陽の紫外線や雨水は、アスファルトの柔軟性を少しずつ奪っていきます。また、夏と冬の激しい温度差による伸縮の繰り返しも、ひび割れの原因となります。これらの自然の力による劣化は、いわば舗装の「老化現象」と言えるでしょう。
ひび割れの種類で分かる!道路の"健康診断"
ひび割れは、その形状によって原因がある程度推測できます。まるで医者が患部を見るように、プロはクラックの種類から道路の健康状態を診断します。
重症度の高いサイン「亀甲状のひび割れ(ワニクラック)」
ワニの背中のように、網目状・亀甲状に細かくひび割れている状態は、かなり症状が進行している危険なサインです。これはアスファルト層だけでなく、その下の路盤自体が弱っている可能性を示唆しており、表面的な補修だけでは解決しないケースが多く見られます。
施工の継ぎ目に多い「線状のひび割れ(リニアクラック)」
道路のセンターライン付近や、縁石・マンホールといった構造物との境界に、一本の線のように入るひび割れです。これは、性質の異なるもの同士が接する「継ぎ目」の動きにアスファルトが追従できずに発生します。施工時の丁寧な処理が、このクラックを防ぐ鍵となります。
【プロの技】正しい補修工事の手順とポイント
ひび割れを本当に直し、再発を防ぐには、ただ上から何かを詰めるだけでは不十分です。内部に水が侵入する道を完全に断ち切るための、丁寧な下地処理と適切な手順が不可欠です。
手順1:クラックカットと清掃
まず、ひび割れに沿って「クラックカッター」という専用の機械でV字型またはU字型に溝を切ります。これにより、補修材を充填するための十分なスペースを確保し、脆くなった部分を取り除きます。その後、高圧の空気(ブロワー)で、溝の中のゴミやホコリ、水分を完全に吹き飛ばします。この下地処理を疎かにすると、補修材がすぐに剥がれてしまうため、最も重要な工程です。
手順2:プライマー(接着剤)の塗布
清掃した溝に、補修材と既存のアスファルトを強力に接着させるための「プライマー」という液体を丁寧に塗り込みます。これを塗ることで、補修材が一体化し、強度と耐久性が格段に向上します。
手順3:補修材の充填
プライマーが乾いたら、ひび割れの種類や深さ、交通量などに応じて選定した最適な補修材を、隙間なく充填していきます。材料が多すぎても少なすぎてもダメで、周囲の路面と平らになるように調整しながら仕上げます。材料の選定や充填の加減も、プロの腕の見せ所です。
まとめ:表面的な作業でなく、「なぜ?」にこだわるのがプロの仕事
アスファルトのひび割れ一つとっても、その裏には様々な原因が隠されています。ただ穴を埋めるだけの対症療法的な作業ではなく、「なぜこのひび割れが起きたのか?」という根本原因を考え、最適な工法を選ぶ。それこそが、10年後、20年後も安心して使えるインフラを創るプロフェッショナルの仕事です。
木村興業では、すべての工事において、この「なぜ?」という探究心を大切にしています。物事の本質を考え、こだわりを持って仕事に取り組みたい方、私たちと一緒に、次世代に残る確かな仕事をしませんか?
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